2018年10月23日:日本経済新聞掲載記事より抜粋
北海道のブラックアウトで、新電力として小売や発電を手掛ける当社も含め、電力会社の責任が極めて大きいことを改めて実感した。電源の集中や原子力発電所の停止が原因とされるが、あらゆる面で完璧な電源は存在しない。犯人捜しではなく、この事例を糧に多様な電源を活用できるシステムを構築することが重要だ。
北海道電力に設備増強を求める声があるが、投資分は電気料金という形で消費者にしわ寄せがくる可能性がある。北海道は再生可能エネルギーの発電に適している。様々な発電事業者が今まで以上に参入すれば、電源の増強・多様化につながる。競争を促し、新規参入企業の力を活用することを考えてほしい。
再エネを普及させようという政府の政策は正しい。7月に決めたエネルギー基本計画でも再エネの主力電源化を掲げた。そのためには効率的で安定した供給が求められる。北電だけでなく、発電事業者や小売事業者も責任感を持つべきだ。
当社のバイオマス発電所も約1カ月半分の燃料を蓄えている施設がある。災害に備えた燃料確保が不可欠だ。北海道の地震では発電量の不安定な太陽光発電は送電再開が遅れたが、蓄電池を併設して送電量を安定させられる施設は早く送電再開を要請された。
小売事業者は消費者に、災害時に起こりうる問題や対処法を説明し、非常時にメールなどで正しい情報を発信する必要がある。これまでは価格競争一辺倒だったが、災害時対応は小売事業者の新たな競争軸だ。
北海道と本州を結ぶ送電線「北本連系線」の増強は必要だ。電力会社の競争が促され、再エネの調整にもつながる。足元で電力価格が高騰しているが、連系線増強で競争が進めば、消費者のメリットは大きい。
2020年に大手電力の発電と送配電部門を切り離す発送電分離が始まる。送配電会社を2~3社に再編することも選択肢とし、最適なあり方を探るべきだ。既存の電源と再エネをどう使うか。再エネは地域再生にもなる。自治体と開発で協力するなど、地域密着型の事業を進めるべきだ。