福島原発事故の廃炉、賠償費用が倍増、毎月の国民負担はいくら? 広がる反発の声

2017年1月18日  ZUU online

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東京電力福島第一原子力発電所の廃炉や賠償などにかかる費用が、20兆円を上回って従来の政府想定の2倍に膨らみ、一部を送電網の利用料金(託送料金)に転嫁する方針が打ち出された。託送料金は原発を持たない新電力にも適用され、事実上の国民負担になる。

 

経済産業省は交換条件として新電力が原発で作った電力を利用しやすくするとしているが、新電力は販売可能な電力が増えたとしても、原発の電力を使用したくない消費者は選択肢が狭まる。新電力だけでなく、消費者団体や環境保護団体から反発の声が上がっている。

 

合計11兆円のはずが21兆5000億円に

経産省によると、2013年末の政府想定では、福島原発の廃炉、賠償などにかかる費用は▽廃炉2兆円▽賠償5兆4000億円▽除染2兆5000億円▽汚染土を保管する中間貯蔵施設1兆1000億円-の合計11兆円としていた。

 

ところが、2016年末に経産省が示した新試算では▽廃炉8兆円▽賠償7兆9000億円▽除染4兆円▽中間貯蔵施設1兆6000億円--の計21兆5000億円に達している。2011年の最初の想定が6兆円。それが2度に渡って増え、2011年の想定の3.6倍、2013年の想定と比べてもほぼ2倍に膨れたわけだ。

 

しかも、今回の想定には炉内で溶け落ちた核燃料(燃料デブリ)を取り出したあとに必要となる廃棄物の処分費が含まれていない。これを加えれば、全体の費用がさらに押し上げられることになる。

 

経産省は賠償先や除染場所が増えたためとしているが、見通しの甘さを批判されても仕方がないだろう。脱原発派団体からは「問題を小さく見せるため、最初は少額で見積もり、ほとぼりが冷めたころにより大きな額を後出ししてきた」との見方も出ている。

 

これら増額分は東電の経営改革や政府が持つ東電株式の売却益などが充てられる方向だが、それらに費用だけで賄えるかどうかは定かでない。さらに費用が膨れ上がれば、東電の力でとても対応できそうもない。

 

経産省試算で標準家庭の負担は毎月18円

不足する費用を調達するために打ち出されたのが、託送料金への上乗せだ。2016年末の経産省有識者会議では、21兆5000億円の費用のうち、2兆4000億円を託送料金へ上乗せする方針を打ち出した。実施期間は2020年から40年間で、経産省の試算だと標準家庭の負担額は毎月18円になる。

 

経産省電力市場整備室は有識者会議で2兆4000億円について「原発事故に備え、過去に電気料金に上乗せしておくべきだった費用」と説明したが、「原発事故当時、存在しなかった新電力に負担を求めるのは、電力自由化の趣旨に反する」「本来、東電が負担すべきもの」と批判する声が新電力や市民団体から上がっている。

 

これに対し、世耕弘成経産相は年頭の記者会見で「過去の料金算定の中でそういうコストが算定されていなかったのは事実。これを収集し、福島の復興や電力の安定供給につなげるのが経産省の責任だ」と反論した。

 

有識者会議は福島第一以外の原発についても、稼働から原則40年で廃炉にする計画より早く廃炉が決まった場合、費用の一部を上乗せすることにした。その一方で、原発などで作った電力を集めて「ベースロード(基幹)電源市場」を創設、ここから新電力が電力調達できるようにする。

 

廃炉に必要な費用はあらかじめ見積もった額を40年かけて積み立てる。関西電力美浜原発1、2号機など6基が早期廃炉を決定済みで、経産省は6基合わせて約1800億円が必要とみている。今後、国民負担がどこまで上がるか分からない状況だ。

 

新電力や環境NGOが相次いで反対声明

今回の託送料金転嫁は国会で法改正の必要がなく、経産省令の改正で済む。このため、各方面からさまざまな反対の声が出ている。超党派の国会議員グループ「原発ゼロの会」は「国民的な議論や国会の関与もないまま、電力システム改革の原則をゆがめるのは言語道断」とする声明を発表した。

 

消費者団体の日本消費者連盟は賠償費用の一部を託送料金に上乗せすることを「東電が賠償責任を逃れ、消費者に負担を迫るのは問題」とする申し入れ書を世耕経産相に提出、託送料金転嫁に反対する署名を募っている。

 

国際環境NGO(非政府組織)のFoE JAPANは「東電の責任をあいまいにしたまま、国民負担の増加は許されない」とする声明を発表。「電力自由化や民主主義の原則に反した行為で、原発事業者を不当に保護している」と批判している。

 

新電力側にも強い反対がある。市民電力連絡会会長で、イージーパワー(東京)の竹村英明代表は「電力システム改革ではなく、東電の救済策になっている」としたうえで、東電の法的整理を前提として国会で国民負担のあり方を議論するよう求めている。

 

竹村代表は「事故対策費用が足りなくなっている背景には、損害を非現実的なほど低く見積もり、原発の発電コストが安いと見せかけてきたことがある。費用の一部を新たに転嫁するのは消費者への裏切りではないか」としている。

 

電力システム改革にしろ、福島の復興にしろ、東電だけで対応できないとしたら、国民の理解を得ながら負担の形を決めていく必要がある。あらためて国会で十分な議論を行うことが政府に求められそうだ。

 

(高田泰 政治ジャーナリスト)