関西電力の荒れた説明会 役員報酬に出席者が怒り

2015年2月9日 7時2分 産経新聞ニュース

http://news.livedoor.com/article/detail/9764774/


 電気料金の値上げに向けた手続きを進める関西電力に、消費者の怒りが爆発している。


 食料品などの物価が上昇する一方、実質賃金は目減りを続けるなか、この2年で2度目となる電気料金の値上げ。関電の家庭向け電気料金は、全国10電力でも最高水準となる見込みだ。消費者向けの再値上げ説明会では、高止まりする役員報酬や顧問報酬、収支改善に関する“無策”ぶりがやり玉にあがった。


“常套句”も通じず

 「値上げの原因は原子力発電所の停止だけか。火力発電の燃料費の計算根拠をはっきりしてほしい」「経営の効率化で、どれほど燃料費を圧縮できるのか」。


 1月末、関西消費者団体連絡懇談会の主催で大阪市内で開かれた再値上げに関する説明会。昨年末の再値上げ表明後、関電が初めて直に消費者の声に触れる場となったが、冒頭から厳しい声にさらされた。


 消費者側の矛先がまず向かったのは、関電が再値上げの理由の切り札として主張している火力燃料費の増加。説明会でも、グラフなどを用いながら平成27年度は燃料費などを中心に約3200億円の費用増になり、経営効率化では吸収しきれないと強調した。


 だが、消費者側は納得しない。2年前の前回値上げ時、4年連続が見込まれる赤字決算、と関電は自社の苦境を“アピール”する材料に、燃料費の増加を用いることが常套化しているようにみえるからだ。


 出席した関電役員は「圧倒的に燃料費の負担増が(再値上げの理由として)大きい。燃料費は(企業努力で)前回の値上げ時の計画より減らしている」と弁明に終始した。ただ、昨秋に再値上げした北海道電力が、半年間程度は値上げ幅を認可された価格より圧縮した料金としていることを例にあげ、「ご負担が少なくなるように努力したい」とも表明。負担軽減のため、何らかの策を取ることを約束させられる結果となった。


“厚遇”にOBからも怒りの声

 出席者の怒りは、関電社内の“厚遇”にも向かう。前回の値上げ時に、役員報酬の平均を4100万円から1800万円にする目標を立てたが、2100万円にとどまっていた。今年から1800万円に落とす取り組みを始めたが「これまで4千万円ももらっていたなんて驚きだ」との声も。


 関電OBの男性は「報酬ゼロにするくらいの腹をくくれないのなら、経営者をやめるべきだ。民間企業なら2期赤字が続いたら経営者は辞任だ。経営責任を取っておらず消費者をバカにしている」と激しい口調で詰め寄った。


 他にも「顧問、取締役の人数を減らしてから値上げをお願いするのなら分かる」との意見も。1月の政府の値上げ審査会合でも問題視された、顧問7人に支払う計4千万円の報酬見直しを求めた。


 財務が危機的状況にあると強調する関電だが、市民感覚からの素朴な疑問も寄せられた。


 大阪・中之島の関電本店が入る関電ビルディング。地上41階、高さ約195メートルと周囲にそびえる同ビルに対して「危機的状況というが、あれだけのビルに入り続けていられるのには、市民感情として疑問をもたざるをえない」と追及の手が広がった。


関電への警鐘続く

 関電では、2年前の値上げ以降、大口顧客の新電力への契約切り替えが相次ぎ、今年度の離脱件数(今年1月1日時点)は4651件と、2年連続で過去最多を更新中。「顧客離れは景気の影響だけではない。来春に家庭向けの電力小売りが自由化されたら私も関電との契約をやめる」と宣言する消費者もいた。


 電力各社はここに来て、原油安の追い風などで業績が改善傾向。平成27年3月期の連結業績見込みでは4社が利益計画を上方修正している。原発停止という条件は同じなか、関電の出遅れが際立ち始めている。


 原油価格などを電気料金に反映させる制度で、東京電力や中国電力は4月から電気料金が下がる見通しに対し、基本料金が上がる関電では、原油安でも契約者の負担は増える方向だ。関電の契約者は原油安の恩恵がなく、地域間の電気料金格差が拡大する可能性がある。


 関電は今後も要望などを受け、消費者に直接、再値上げを説明する場を持つ予定。再値上げに向け、ひたすら“平身低頭”を続けることになりそうだ。


 ただ、首尾よく再値上げできても、他地域に比べ高い電気料金に契約者が愛想を尽かす傾向は続きそうだ。消費者の声からは、関電へのそんな「警告」が読み取れる。