【新電力(PPS)】東電、域外で大口供給 関西・中部のヤマダ62店

日本経済新聞

http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ26HEK_W4A820C1MM8000/


 東京電力は10月から、家電量販最大手ヤマダ電機の関西と中部地方の62店舗に電力を供給する。東電が首都圏以外で電力を販売するのは初めて。関西などで地元の電力大手より数%安い料金で乗り換えを促し、10年後に首都圏以外で1700億円の売上高を目指す。電力小売り自由化が進む中、東電の域外供給第1弾が決まり、地域の垣根を越えた電力会社の競争が本格的に始まる。電気料金の引き下げが広がる端緒になりそうだ。

 東電は全額出資子会社のテプコカスタマーサービス(東京・江東)を通じヤマダに電力を供給する。62店舗は関西が大阪市の主力店「LABI1なんば」を含む24店舗、中部が38店舗。これまで主に関西電力や中部電力から電気を買っていた両地域の店舗の約4割が対象になる。東電への切り替えで、ヤマダは年間数千万円程度のコスト削減につながるとみられる。


 契約電力は1万9千キロワットで大規模工場10カ所分に相当する大口契約となる。電力使用量は合計5千万キロワット時と、一般家庭の1万5千世帯分に相当する。東電は各地域で民間企業の自家発電設備の余剰電力などを安価に調達し、各地の電力会社の送電線を使い利用者に供給する。ヤマダ以外にも10社近くと首都圏以外で販売契約を結ぶべく最終調整中だ。


 大手電力では中部電力が新電力を買収し、既に首都圏で電力供給を手掛けているが、単一の事業所向けなど規模は限られていた。新電力は大手電力に比べ5%程度安い料金で供給している。東電も同様の水準を想定しており、一定規模の事業者向けから安い料金を利用しやすくなりそうだ。


 2013年度のエネルギー白書によると、民間企業が払う電気料金の平均単価は電力各社の相次ぐ値上げで10~13年度に28%上昇した。家電量販最大手のヤマダが契約切り替えに動いたことで、様々な業種で同様の動きが広がる可能性がある。


 00年以降、段階的に電力小売りの自由化は進んだ。ただ、大手電力は営業エリア外で電源を持っていなかったことに加え、地域独占の枠組みを壊すことへの抵抗感などから、相互参入はほとんど進んでいなかった。


 だが、16年には家庭向けも含め全面自由化が予定される。東電は福島第1原子力発電所の事故以降、経営の立て直しが急務で、旧来のすみ分けを越えた収益拡大を進める。16年以降は一般家庭向けでも地域を越えた競争が広がり、一般家庭の電力料金引き下げにつながりそうだ。


 1月に政府が認定した新しい総合特別事業計画(再建計画)で東電は首都圏以外で3年後に340億円、10年後に1700億円の売上高を目指す方針を示した。並行して他のエネルギー会社と燃料調達などで提携し発電事業のコスト削減も進める。